屋外の公園で児童が虫めがねで甲虫を観察している様子

家の中と庭でよく見る甲虫の見分け方ガイド

甲虫は、家の中や庭で人目につきやすい昆虫のひとつですが、誤解されていることも多いグループです。代表的な甲虫を見た目や行動、見つかる場所から見分けられるようになると、そのまま放っておくか、屋外に逃がすか、あるいは駆除すべきかを判断しやすくなります。ここでは、生物学の専門知識がなくても実践しやすい、室内と屋外の甲虫の見分け方に焦点を当てて解説します。

甲虫を素早く見分けるポイント

甲虫には、ほかの昆虫と区別しやすい共通の特徴がいくつかあります。まずこの基本を押さえておくと、目の前の虫がどの仲間なのか、そして家の中で問題になりやすい種類か、庭にいても害の少ない種類かを判断しやすくなります。慣れてくると、体の形や色、見つけた場所を「パズルのピース」のように組み合わせるだけで、おおよそのグループが分かるようになります。

最初に注目したいのは、かたい前翅(えいし)です。前翅は、甲虫の背中を覆う「ふた」のような役割をしており、左右が背中の中央でまっすぐに合わさっています。表面はつるつるしていたり、光沢があったり、ざらついた質感のこともあります。カメムシ類やハチ類など多くのほかの昆虫は、薄い翅が露出していたり、違うたたみ方をしているため、この丈夫な翅のふたを確認できれば、甲虫である可能性が高いと分かります。

次に、体の形と大きさを見ます。カツオブシムシ類のような室内害虫は、数ミリ程度と小さく、楕円形でやや丸みを帯びています。一方、コクヌストモドキ類など食品に付く甲虫は、細長く円筒形に近い体つきをしています。庭でよく見かける大型の甲虫には、がっしりしたコガネムシ類、細長く扁平なオサムシ類、丸く半球状のテントウムシ類などがいます。また、体表がつやつやしているか、毛深いか、まだら模様やうろこ状の模様があるかといった点も、室内に出る数種を見分けるうえで重要な手がかりになります。

さらに、行動と見つかる場所を組み合わせると、かなり絞り込めます。夜に灯りへ飛んでくる甲虫と、乾いた食品の中を歩き回る甲虫、巾木のすき間から出てくる甲虫とでは、種類も意味するところも異なります。窓辺、食品棚、カーペット、鉢植え、屋外の丸太の下など、どこでよく見つかるかを記録しておきましょう。また、動き方にも注目します。すばやく走り回る肉食の甲虫と、ゆっくり動きながら種子を食べる甲虫とでは、見た目だけでなく行動パターンも違います。こうした手がかりを組み合わせることで、多くの場合は代表的な数種類まで候補を絞ることができます。

家の中でよく見かける甲虫

家の中に現れる多くの甲虫は小さく、被害が出るまで見落とされがちです。繊維を食べる種類、食品を食べる種類、木材を食べる種類、たまたま迷い込んだだけの種類を見分けられるようになると、対策の手間が大きく減ります。室内での同定では、とくに模様や大きさ、家のどこで見つかるかが重要なポイントです。

カツオブシムシなどの衣類・繊維害虫

カツオブシムシ類は、室内でしばしば誤認される甲虫です。というのも、成虫はあまり害がなさそうな見た目なのに対し、実際に被害を出すのは幼虫だからです。成虫はおよそ2〜4ミリと非常に小さく、ぱっと見には小さな点がすばやく動いているようにしか見えないこともあります。多くの種は、テントウムシを小さくしたような丸い輪郭をしていますが、はるかに小さく、うろこ状のはね(鱗片)によってまだら模様ができています。

ヒメマルカツオブシムシは、白・茶・黄の鱗片が混じったまだら模様が典型的で、ヒメカツオブシムシは白い斑点が多く、模様のコントラストがやや弱い傾向があります。クロカツオブシムシは、全体が暗褐色から黒色で、やや細長く、完全な円形ではありません。成虫は、窓際や照明の周り、壁面などでよく見られ、歩き回ったあとに明るい方向へ飛んでいきます。

実際に厄介なのは幼虫で、一見して甲虫の幼虫と気づかれないことも多い存在です。幼虫は毛が多く、にんじん形や樽形をしており、茶色がかった体色で、表面の剛毛が人によっては皮膚を刺激することもあります。幼虫は、ウールや羽毛、毛皮、シルク、乾燥標本の昆虫、ペットの抜け毛など、動物由来の繊維や自然素材を食害します。ウールのカーペットや衣類、ぬいぐるみ、布張りの家具などに、不規則で小さな穴があったり、抜け殻が見つかる場合は、カツオブシムシの活動が強く疑われます。窓辺に小さなまだら模様の成虫がいて、同時に天然繊維の被害が見られるなら、カツオブシムシ類である可能性がきわめて高いでしょう。

台所に出る食品害虫(貯蔵食品害虫)

台所や食品庫に出る甲虫は、乾燥した保存食品に特化しており、穀物袋の中や棚の周囲で「何かが動いた」ことで初めて気づかれることがよくあります。カツオブシムシと違い、多くの食品害虫の甲虫は、より細長く、丸みが少ない体つきをしています。アカアシオオコクヌストモドキやノコギリヒラタムシダマシなど、いわゆるコクヌストモドキ類は、長さ3〜4ミリほどで細く平たい体をしており、側面がほぼ平行で、表面はつやのある赤褐色です。小麦粉やシリアル、ホットケーキミックス、割れた穀粒、香辛料、ドライフードなどに混入して見つかることが多くなります。

もう一つよく見られるのがノコギリヒラタムシの仲間です。非常に平たく細長い体で、胸部の側面にノコギリの歯のような突起が並んでいるのが特徴的です。ノコギリヒラタムシは、見た目には封が締まっている包装のすき間からでも入り込み、中で増殖してしまうことがあります。米やシリアル、鳥のエサなどを器にあけたとき、極小の茶色い甲虫がすばやく走り回るのが見えたら、この仲間の可能性が高いと考えられます。

タバコシバンムシやジンサンシバンムシもよく見られる保存食品害虫で、小さく楕円形で、背中が丸く盛り上がった姿をしています。香辛料や乾燥ハーブ、たばこ製品、各種の種子、場合によってはドライフードなどを加害します。タバコシバンムシは、全体が均一な明るい褐色で、表面は比較的なめらかです。ジンサンシバンムシはよく似ていますが、やや細長く、前翅にうっすらと縦すじが見えることがあります。いずれも頭をぐっと前に曲げる姿勢をとることが多く、体を丸めたような印象に見えます。特定の容器の周りにこれらの甲虫が集まっているようなら、長期間保管している植物性の乾物を中心に、じっくり点検してみましょう。

木材を食べる甲虫と「迷い込み」の甲虫

室内で見かける甲虫の中には、もともと木材と関係の深い種類もいます。建築材や家具、構造材の中で幼虫が育ち、成虫になってから屋内に現れるパターンです。ナガシンクイムシやキクイムシ類と総称される木食性の甲虫はその代表で、小さく細長い褐色の体をしており、木材から出てくる際に、ピンの先ほどの丸い孔と、さらさらした粉状のおがくず(ふんと削りくずが混じった「フラス」)を残します。成虫そのものはあまり目立たず、むしろ硬木の床材や巾木、古い家具などに、小さな孔がまとまってあいていることで存在に気づくことが多いでしょう。板や骨董家具の下に細かい粉がたまり、その近くで小さな細身の甲虫を見つけた場合は、木材害虫の可能性を考える必要があります。

また、コメツキムシ類が春先に家の中をうろつくこともあります。コメツキムシは細長く扁平な体つきをしており、ひっくり返されると「カチッ」という音を立てて跳ね起きる独特の仕組みをもっています。室内に入ってくる個体の多くは、屋外から隙間を通って迷い込んだもので、薪に付いて持ち込まれることもあります。家の中で繁殖することはほとんどないため、窓辺や灯りの下でぽつんと一匹だけ見つかった場合は、屋外に逃がすかそのまま外へ出るのを待てばよいでしょう。

ときには、庭や芝地にすむオサムシやハムシが室内に入り込むこともあります。オサムシ類は多くが黒色〜金属光沢のある暗色で、細長く扁平な体と長い脚、大きなあごが特徴で、すばやく走る肉食性の甲虫です。一方ハムシ類は、小型で楕円形のものが多く、しばしば鮮やかな色彩や金属光沢をもっています。これらが玄関付近や地下室、掃き出し窓のそばで見つかると驚くかもしれませんが、多くの場合はたまたま入り込んだだけで、室内に定着することはありません。このようなケースでは、「何者か」を知ること自体が安心材料となり、大規模な駆除の必要がないと分かるはずです。

庭や畑でよく見かける甲虫

庭や畑に出る甲虫は、家の中の種よりもはるかに多様で、害虫もいれば重要な天敵もいます。屋外の甲虫を見分ける際は、どの植物やどんな場所にいるのか、昼と夜のどちらに活動が盛んなのか、一匹ずつなのか群れているのかといった点に注目すると、味方なのか要注意害虫なのかを見極めやすくなります。

テントウムシは、最も見分けやすく、たいていは益虫とされる甲虫です。多くの種は小型で半球状の体をしており、赤やオレンジ、黄色の前翅に黒い斑点を持っていますが、中には黒地に赤やオレンジの斑点を持つ種類もいます。よく知られたナナホシテントウは、赤い前翅に左右3つずつ、中央に1つの黒い斑点があり、広く分布しています。ナミテントウなど外来種を含む多くのテントウムシは、色や斑点の数に変化が大きく、オレンジから赤、淡色までさまざまで、斑点が多いものも少ないものもあります。頭の後ろの「前胸背板」と呼ばれる部分に、アルファベットの「M」や「W」に見える淡色の模様がある種も知られています。テントウムシは、アブラムシやカイガラムシがついた植物に群れて見られ、幼虫・成虫ともにこれらの害虫を盛んに捕食します。

オサムシ類も、石や板、マルチ資材の下などでよく見かける甲虫です。細長い体と長い脚を持ち、多くは黒色や暗い金属光沢を帯びた色で、やや扁平な体つきをしています。多くの種は夜行性で、毛虫やほかの昆虫、小型の土壌生物をすばやく追いかけて捕食します。夜間、テラスや外灯の近くを走り回る黒っぽい甲虫の多くはこの仲間で、害虫の密度を抑えてくれるありがたい存在と考えられています。

ハムシ類やコガネムシ類の中には、庭木や作物を食害するものも多く含まれますが、中立的または有益な種もいます。ハムシ類は小型で楕円形のものが多く、鮮やかな色彩や金属光沢が目立ちます。多くはバラやヤナギ、野菜など特定の植物を好み、その葉を食べて丸い穴(ショットホール)や縁がギザギザに欠けた跡を残します。コガネムシ類は、いわゆる「カブトムシの仲間」を含むグループで、体がしっかりして厚く、茶色や緑がかった色合いのものが多く、掘るのに適した丈夫な脚を持ちます。成虫は葉や花を食べ、幼虫である「シロテン(コガネムシの幼虫)」は土の中で生活し、芝生の根をかじって枯れを招くことがあります。厚みのある頑丈な体つきと、先端が扇形に開いた触角を手がかりに、このグループを肉食性の細身の甲虫と見分けることができます。

庭で見かける甲虫の中には、灯りに引き寄せられて現れるタイプもいます。カミキリムシ類は、しばしば体長と同じかそれ以上に長い触角を持ち、夏の夜に玄関灯やベランダに飛来することがあります。ムシヒキアブに似た体つきのカミキリもいますが、いずれも長い触角が目印です。また、セミのような柔らかい体を持つクロカミキリモドキの仲間(ソルジャービートル)は、ホタルに似た細長い体をしていますが、発光器官は持たず、花の上を歩き回りながら花粉や蜜、小型の昆虫を食べます。これらの訪問者は、色や大きさから不安を感じさせるかもしれませんが、多くは無害か、むしろ益虫です。触角の長さや体の硬さ、花によく集まるかどうかといった点を見れば、重大な植物害虫かどうかをすばやく見極められます。

まとめ

家の中や庭の甲虫を見分けるうえで重要なのは、体の形や色、行動と「どこで見つかったか」を結びつけて考えることです。カツオブシムシ類や貯蔵食品害虫がいれば、衣類や食品の管理に目を向ける必要がありますし、木材を食べる甲虫がいれば、家具や建材の状態を点検するサインになります。一方、屋外で目につく甲虫の多くは、害虫の天敵か、植物に軽い食害を与える程度の存在であり、人に直接の危険を及ぼすものではありません。いくつかの見た目の特徴と、見つかった場所の情報を手がかりにすれば、「そのまま見守る甲虫」「庭で増やしたい甲虫」「的を絞って対策すべき甲虫」を自信を持って見分けられるようになるでしょう。

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